研究概要 |
磁気共鳴分光法は液体中の化学種の微視的状態を知るための極めて有力な手段である。 しかし、伝導電子が多量に存在にするような電子伝導性液体では、電磁波が試料に十分浸透できないという表皮効果のためにその適用には限界がある。 とくに通常のESR装置は共鳴周波数が高い(1〜35GHz)ため、限られた情報しか得られない。 本研究ではESRとNMRの測定を同一周波数(約100MHz)で行い、アルカリ金属ーアンモニア(アミン)溶液を中心とする各種の電子伝導性液体の電子状態の解明を計るものである。 このための低磁場ESR装置を自作し、既設のNMR装置との組合わせと調整を行った。 低磁場ESR装置としてCW方式を採用し、測定は共鳴磁場195MHz,掃引磁場63〜76ガウス、磁場変調周波数6kHzで行った。冷却窒素ガスを用いて、170〜250Kでの測定を可能にした。 リチウム金属ーメチルアミン系に対する実験結果は以下にまとめられる。 1.金属の単位量当りのESRスペクトルの面積強度は温度の上昇とともに増加し、また金属濃度の増加とともに減少する。 2.スペクトルの線幅から見積もられる見掛けの横緩和時間T^*_2 は0.1ー0.3μsで、温度および金属濃度の増加とともに増加する。 3.スペクトルの線形はリチウムの濃度が23モル%(飽和濃度)に至るまで、良い対称性を示す。 第2年度にはさらに装置のパルス化による緩和測定を試みた。装置の特性上スペクトルの線幅は20ミリガウス程度であることが心要であり目下金属ーアンモニア系の試料の調製について検討している。 一方、いくつかのカルコゲナイド系液体半導体の電子物性に対するタリウムとビスマスの添加効果に大きな差があることを見出した。 今後それぞれの核のNMRおよび伝導電子のESRを調べる予定である。
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