研究概要 |
本年度は以下の3つの事柄について実験・研究を行なった。 (1)共鳴ラマン装置の改良……昨年度の測定結果より,本実験条件下でラマン分光を行うためには分光器と検出器の改良が必須であることが判明したので,別途予算を用いてこれらを調達し,測定系を組みなおした。即ち,ポリクロメ-タ-を採用して迷光を除き,ダイオ-ドアレ-を用いてゲ-ト付積算測定が可能なようにした。この結果,比較的短時間でS/Nの良い測定ができるようになったが,レ-ザ-強度には未だ問題が残っている。 (2)4ー(9ーアントリル)ーN,Nージメチルアニリン(ADMA)の電荷移動状態を超臨界CF_3H中で観測することに成功し,その生成・消失のダイナミックスをピュ秒領域で測定した。しかし,ADMAはCF_3Hに対する溶解度が低いためラマン測定には少し問題がある。ついで,4ー19ーアントリル)アニリン(AA)を合成し,これが極性溶媒中で電荷移動状態を生成することを示した。AAの超臨界流体中での測定およびラマン分光は次の課題である。 (3)9,9'ービアントリル(BA)の共鳴ラマン測定……BAは370nm以下に吸収を示し,S_1状態からの発光は600nm附近まで延びている。一方S_1状態は600nm附近にS_1→Sn吸収を示すので,600nm附近で共鳴ラマン測定を行うことができる。無極性溶媒中でS_1状態からの共鳴ラマン散乱を観測し,及びcm^<-1>にピ-クを見出した。極性溶媒中で電荷移動状態の共鳴ラマンを測定する試みは現在進行中である。 以上のように,実験装置の改良に多くの時間を費したため,計画の進行に支障をきたしており,成果の公表は約半年遅れの予定である。
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