研究概要 |
固体表面の動的過程を原子・分子レベルで"みる"ことは長らく化学者の夢に留まっていた。しかし、最近、時間分解電子エネルギ-損失分光(Time-Resolved Electron Energy Loss Spectroscopy,TREELS)の開発により、表面反応の"直接観測"が可能となりつつある。本研究の目的は新型のTREELS装置を開発し、それを用いて、吸着種、吸着状態・位置・構造などの実時間測定を行い、表面動力学に関する詳細な情報を得ることである。 研究代表者は、既に分散補償型TREELS分光器の本体の試作を完了しているので、平成元年度は主として関連施設の整備とTREELS装置の調整を実施した。 1.関連施設の整備内容 (1)超高真空排気系の整備-イオン・ポンプ(既設のもの)の設置 (2)高性能試料マニピュレ-タ-の設置-位置分解能0.005mm,角度分解能0.01° (3)質量分析計の設置 2.TREELS装置の調整 分散補償型TREELSは従来のEELSと異なり、モノクロメ-タ-の出射側にスリットを用いずに損失エネルギ-を測定できるので、原理的には入射した電流の全てを利用する。またパス・エネルギ-が高いので試料電流も多い。両者を合計して10^2〜10^3倍の強度が期待される。平成元年度に達成したdirect modeでのエネルギ-分解能、検出器電流は、それぞれ、18meV、32pAである。
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