• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

1990 年度 実績報告書

人工脂質生体膜モデル・リポソ-ムの熱力学的安定性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 01470013
研究機関岡山理科大学

研究代表者

児玉 美智子  岡山理科大学, 理学部, 助教授 (40101282)

研究分担者 砂本 順三  京都大学, 工学部, 教授 (80037811)
キーワード示差走査熱量測定 / ゲル液晶相転移 / ジミリストイルフォスファタイジ-ルコリン(DMPC) / 一重膜,多重膜ベシクル / 熱力学的安定性 / ジミリストイルフォスファタイジ-ルグリセロ-ル(DMPG)
研究概要

本研申請の高感度示差走査熱量計(Microcal社MCー2K型)を購入の後にこの装置の操作法を修得し,実験を開始した。まず,研究対象物質として実在生体膜の主成分である中性リン脂質,dimyristoylphosphatidylcholine(DMPC)を選び,この両親媒性分子が水の共存下で形成するベシクル(リポソ-ム)の熱力学的安定性を上述の熱量計を用いてベシクルの有するゲル-液晶相転移をモニタ-することで検討した。得られた結果を以下に記述する。1)DMPCの多重膜ベシクル(MLV)は超音波照射を施すことで大きいサイズの一重膜ベシクル(LUV)を経て小さいサイズの一重膜ベシクル(SUV)に移行する;2)この移行過程は超音波照射の時間ならびに強度や試料温度に影響される;3)熱量測定からは,MLV,LUVおよびSUVのゲル-液晶相転移に伴われる転移温度および転移エンタルピ-はともにこの順序で減少することが明らかにされた。この結果は,3種ベシクルのゲル相でのエンタルピ-が異なること,すなわち,球形表面の曲率の小さいベシクルほどDMPC分子がより密に充填した集合状態をとることが示唆される;4)3種ベシクルのゲル相のエンタルピ-が異なることを考慮することで,試料に低温熱処理(〜4℃)を施すと,LUVおよびSUVは最終的にはMLVまで移行する。この結果は,3種ベシクルの熱力学的安定性はSUV<LUV<MLVの順に増大することを示す;5)これに対して,3種ベシクルを液晶温度で保持するとベシクルの形態変化をほとんど観察されない。
次に,負電荷を有するdimyristoylphosphatidyl glyceroal(DMPG)を対象物質として選び,上述と同様の実験を行なうと,熱力学的最安定型は一種膜ベシクルであると結論が得られ,リン脂質が荷電を有することに基づくベシクルの熱力字的安定性の相違が確認される。これに関してのより深い知見を得るために現在,研究を続行している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] M.Kodama,K.Tsujii,S.Seki: "Calorimetric Investigation of the Stability of Octadecyltrimethylーammonium HalideーWater Syatems." J.Phys.Chem.,. 94. 815-819 (1990)

  • [文献書誌] M.Kodama,T.Kunitake,S.Seki: "Thermal Characterization of Mode of Phase Transition in Dioctadecylーdimethylammonium BromideーWater System in Relation to the Stability of Its Gel Phase." J.Phys.Chem.,. 94. 1550-1554 (1990)

  • [文献書誌] M.Kodama,S.Seki: "Thermodynamical Investigation of the Phase Transitions of SurfactantーWater Systems:Thermodynamic Stability of Gel and Coagel Phases and Role of Water Molecules in their Appearances." Advs.in Colloid and Interface Sci.,. 35. 1-30 (1991)

  • [文献書誌] M.Kodama,Y.Takaichi,K.Akiyoshi,K.Tanaka,J.Sunamoto: "Thermal Characterization of a Polyethyleneglycoal(PEG)ーDerivative Induced Vesicle Fusion as Revealed by Differential Scanning Calorimetry." Thermochim.Acta. 163. 81-88 (1990)

  • [文献書誌] 児玉 美智子: "人工生体膜モデル・リポソ-ム(ベシクル)の示差走査熱量測定による熱化学状態解析(総説)" 油化学. 39. 530-537 (1990)

  • [文献書誌] 児玉 美智子: "両親媒性物質:界面活性剤およびリン脂質の分子集合体発現に対する水の役割" 熱測定(NO.2). 18. (1991)

URL: 

公開日: 1993-08-11   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi