研究概要 |
1.超音速分子線法によってC_6H_5ClとNH_3の(1:1)van der Waals錯体を形成させ、レ-ザ-光イオン化法を用いてその錯体をイオン化すると、ただちに求核置換型反応をおこして、C_6H_5NH_3^+が極めて効率よく生成することを見い出した。反応収率の光強度依存性、波長依存性などを観測し、反応メカニズムの解明を行うことができた。(J,Phys,Chem,投稿中) 2.同様にしてC_6H_5FとNH_3の系について観測を行った。C_6H_5FとNH_3の(1:1)vdw錯体には2種類の異性体(配向又は配位の差異に基づくとみられる)が存在することが見い出された。そのうちの一方は、光イオン化およびそれにひきつづく反応においては、C_0H_5F^+とNH_3への分解をおこし、求核置換型反応はおこさないが、他方の異性体は、C_6H_5NH_2^+への反応が効率よくおきることを見い出した。それらの錯体のイオン化しきいスペクトルや生成物イオン種の出現エネルギ-しきい値などの測定を通して錯体形成→反応にいたるエネルギ-関係を明らかにした。(J,Phys,Chem,投稿準備中、口頭発表済;1989環太平洋国際化学会議等)。 3.光化学反応をおこす有機化合物のvdW錯体や分子クラスタ-内でおきる反応は、溶液内反応の簡単なモデルとみなすことが可能であり、本研究で得た結果はそのモデルの好例として有機光化学的にも重要である。今後の発展の方向として反応中間体としての錯体イオンの性質をより詳しく知る観点にたって、錯体又は、錯体イオンの構造を明確に決めることの必要性を感じている。
|