研究概要 |
本研究では、励起分子のエネルギ-と物性、化学反応とダイナミックスを記述するための量子化学理論の完備とその応用を目的としている。本年度は、この目的をほぼ達成する理論とそのプログラムシステムを完成した。また、CsXe系の衝突誘起吸収過程について研究し、その本質を明らかにした。 〔1〕任意の分子の励起・イオン化・アニオン化状態のEGWF/EX-EGWF理論とそのプログラムシステム 励起分子のダイナミックスを研究するうえで、基底状態や励起状態のポテシャル曲線を正しく計算することは極めて大切である。ここではSAC/SAC-CI理論が使えない場合にも有用な、一般化された指数関数を用いるEGWF(exponentially generated wave function)法とEX(excited)-EGWF法とそのプログラムシステムを完成させた。理論はすでに、J.chem.Phys.83,5743(1985)に掲載した。この方法をC_2、CO、HF分子に適用し、完全解であるfull CIの結果と比較したところ、ポテンシャル曲線の各結合距離において、基底状態、励起状態、イオン化状態、アニオン状態のすべてに対して、大変精度の高い結果を与えることが確認された。この方法は将来、上記の目的に対して、極めて有用な方法になるものと期待される。 〔2〕CsXe系の衝突誘起吸収過程 Csの6s→5d,6s→7sは禁制遷移であるが、Xeなどの希ガスを混入すると、禁制遷移の近傍に新たな吸収が誘起される。この現象を量子化学的に研究し、この吸収のプロフィ-ルがCs-Xeの基底状態と励起状態のポテンシャル曲線や誘起双極子能率の詳細を反映している事を示した。理論的に得られたスペクトルは実験スペクトルをよく再現しており、用いたSAC/SAC-CI理論の信頼性が確認された。
|