研究概要 |
1.トランス-2-ブテンと二酸化窒素を15Kでアルゴンマトリックス単離して、アルゴンイオンレ-ザ-励起の色素レ-ザ-の光を照射したところ、未知の反応中間体であるトランス-ブチルニトリトラジカルの赤外吸収スペクトルを測定することができた。最終生成物としては、トランス-ブテンオキシドが生成することがわかった。 2.シス-2-ブテンについて同様の実験を行なったところ、未知の反応中間体であるシス-ブチルニトリトラジカルの赤外吸収スペクトルを測定することができた。最終生成物としては、メチル基が移動してできる2-メチルプロパナ-ルが生成することがわかった。トランス-2-ブテンとの比較から、可視光によって電子励起された二酸化窒素の酸化反応は、完全に立体選択的であることがわかった。また、マトリックス単離試料の温度をあげたり、あるいは、二酸化窒素の量を増やすと、回転異性化が誘起されて、最終生成物はすべてトランス-ブテンオキシドになることがわかった。 3.エチレンについて同様の実験を行なったところ、未知の反応中間体であるエチルニトリトラジカルの赤外吸収スペクトルを測定することができた。最終生成物としては、エチレンオキシドとアセトアルデヒドが生成した。両者の生成比は照射光の波長に強く依存し、エネルギ-の高いほどエチレンオキシドが生成しやすいことがわかった。1,2-重水素化エチレンについて同様の実験を行なったところ、トランス形の重水素置換体からはトランス形のエチルニトリトラジカルが、シス形の重水素置換体からはシス形のエチルニトリトラジカルが生成し、2-ブテンと同様に、立体選択的な光酸化反応であることがわかった。また、エチルニトリトラジカルの前駆体として、オキシランビラジカルを仮定して反応機構の解明を試み、実験事実と矛盾しないことがわかった。
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