前年度に引続き超音速分子流高分解能赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光システムを製作した。主な改良点は以下の様である。(1)従来のホワイト型多重反射光学系にかわり平行平板型多重反射光学系を採用した。ファンデルワ-ルス会合分子は超音速ノズルの近傍に集中的に高濃度で生成する。新しく採用した光学系は特にノズル近傍に高い光の濃度が得られ、信号の検出感度を著しく向上させる事ができた。(2)超音速ノズルの可動装置を製作し赤外レ-ザ-光とジェット流との空間的重なりを調節できる様にした。また検出感度をさらに高める試みとして下記のような信号処理システムを製作した。(1)出力信号をパルス幅よりも十分短い時間間隔でトランシェントメモリ-に取り込んだ後にマイクロコンピュ-タ-に転送する。(2)パルスのピ-クに近い部分の信号とパルスの直前での信号の差をとる処理をマイクロコンピュ-タ-で行う。このためのコンピュ-タ-用プログラムを製作した。 本装置によりN_2O分子の二量体の1250cm^<-1>領域でのスペクトルが安定して測定できる様になった。このスペクトルによりノズルと赤外レ-ザ-光との空間配置等のテストを行った。ノズルの温度はCO分子の振動回転遷移を利用して測定した所3Kの値が得られた。これはファンデルワ-ルス会合分子を生成するために充分な極低温度である。この装置を用いて新しいファンデルワ-ルス会合分子を検出する試みを行った。COとHClの会合分子およびOCS分子の二量体を測定の候補とした。いずれも2000〜2200cm^<-1>領域にいくつかの信号を得て測定を続行中である。 一般に会合分子の振動回転スペクトルは複雑なパタ-ンを持ちその解析は容易でない。複雑な赤外遷移の帰属を確実にしまた感度をより向上させる目的で二重共鳴分光装置を製作した。マイクロ波の測定周波数領域を広げる目的で2倍周器を購入し、これを用いてマイクロ波分光装置の予備的実験を行った。
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