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1989 年度 実績報告書

電気的因子にのみ支配される立体特異的化学反応およびその酵素進化論への応用

研究課題

研究課題/領域番号 01470022
研究機関京都大学

研究代表者

大野 惇吉  京都大学, 化学研究所, 教授 (70027077)

研究分担者 後藤 睦雄  京都大学, 化学研究所, 助手 (30215503)
キーワード立体特異性 / 立体選択性 / 反応機構 / 酸化還元 / 生体触媒 / 同位体効果 / 生理活性物質 / 不斉合成
研究概要

NAD(P)H-NAD(P)^+系をモデル化した有機化学反応において、中心不斉-軸不斉が相互に高立体選択的に変換し合う系を見出し、その立体発現がいかなる機構によってもたらされているのか、その立体選択性は生体反応におけるそれと係わりがあるのかどうか、を検討してきた。キノン類のように比較的反応性の低い酸化剤との反応では、立体選択性は酸化剤の酸化ポテンシャルと直線自由エネルギ-関係を示すが、金属錯体のように酸化力の強い基質との反応では、塩基触媒作用と立体選択性の間に直線自由エネルギ-関係(ブレンシュテッド関係)が観察される。
我々は今回、この反応の速度の温度依存性を詳細に検討した結果、この反応は我々が通常化学反応を論ずる常温附近あるいはそれ以上の温度においてはエントロピ-支配を受けており、エンタルピ-の関与はわずか20%以下であることが判明した。これでは、これまでの常識に基づいた議論から導き出される遷移状態は全く虚偽のものであったことになる。我々は、改めてこの反応の遷移状態に対する新しいモデルを考え出さなくてはならない。しかも、その遷移状態の構造は上に述べた立体化学をも同時に説明してくれるものでなければならない。詳細についてはまだこれから先の研究結果を待たなければ明らかにすることはできない。
さて、反応の立体選択性を高めるべく、我々は主体触媒の利用を検討している。その一旦として高い立体選択性でγ-またはδ-ニトロアルコ-ルを合成することに成功した。この化合物を出発原料として生理活性を有する有機天然化合物の立体選択的全合成を試みた。その結果、(+)-スルカト-ル、(+)-ブレフェルディンA、その他フェロモン活性のあるスピロケタ-ル等を簡便な方法で合成することに成功した。
ここに示されたように、微生物を利用してキラルな合成単位素を得る方法は今後大いに研究され発展する分野であると信じている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] 中村薫,井上欣彦,芝原淳,大野惇吉: "Stereochemical Control in Microbial Reduction 11. Enantioselective Reduction of β-and γ-Nitro Ketones with Bakers'Yeast" Bulletin of the Institute for Chemical Research, Kyoto University. 67. 99-106 (1989)

  • [文献書誌] 中村薫,北山隆,井上欣彦,大野惇吉: "Stereochemical Control in Microbial Reduction.12.(S)-4-Nitro-2-butanol as a Source to Synthesize Natural Products" Bulletin of the Chemical Society of Japan. 63. 91-96 (1990)

  • [文献書誌] 大野惇吉,小川昌彦,三方裕司,後藤睦雄: "NAD(P)^+-NAD(P)H Models. 69. Mechanism of Stereospecific(Net) Hydride Transfer Controlled by Electronic Effect" Bulletin of the Chemical Society of Japan. 63. (1990)

  • [文献書誌] 中村薫,宮井武彦,河合靖,中島伸佳,大野惇吉: "Stereoselective Synthesis of(2R,3S)-syn-2-Allyl-3-hydroxy-butanoate Mediated by an Enzymatic System from Bakers' Yeast" Tetrahedron Letters. 31. (1990)

  • [文献書誌] 中村薫,井上欣彦,北山隆,大野惇吉: "Stereoselective Preparation of(R)-4-NItro-2-butanol and(R)-5-Nitro-2-pentanol Mediated by Lipase" Agricaltural and Biological Chemistry.

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公開日: 1993-03-26   更新日: 2016-04-21  

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