研究概要 |
本研究は、N→O配位結合を有するピリジンーNーオキシド類縁化合物をタ-ゲットに選び、主としてヘテロ原子(他核)のNMR測定することにより、「物性および反応性を支配する置換基電子効果を高次精密解析すること」を目的とした。今年度は、主として、(1)(4ー置換ーベンジリデン)フェニルアミンーNーオキシド(NITRON)系のNー15 nmr置換基化学シフト(SCS)の精密測定と解析、(2)1ー(4ー置換ーピリジンーNーオキシド)ー3ーエチレンー2,4ージクロロ白金(II)錯体(PYNOPT)系の固体高分解能Ptー195およびCー13 nmrSCSの精密測定と解析、に精力を傾注した。 1.NITRON系のNー15 nmrSCSは、AZOXY系のそれとほぼ等しく、PYNO系のそれのほぼ1/3にあたる。このSCSはLSFE式で高次精密解折が成功し、「パイ電子供与性共鳴寄与とパイ電子求引性共鳴寄与の度合は、系によって変化する」という共鳴効果の二元性が、この側鎖パイ電子系N→Oシステムで認められる。 2.PYNOPT系の固体Ptー195 nmrSCSは、4ーOCH_3から4ーNO_2への変化で150ppm低磁場シフトする、いわゆる正常方向置換基効果を示し、Pt核まで遠隔置換位置からの電子効果が伝達されている。固体Cー13 nmrSCSの精密解析は、PYNOの酸素原子のパイ電子がPtとの配位結合に使用され、芳香環への非局在化が減少し、その結果「N→OーPt」グル-プが見かけ上電子求引グル-プとして働くことを示している。 3.基本化合物PYNO系の塩基性、Nー15およびOー17 nmrSCSの結果をも含めて、N→O配位結合を有する芳香族系や芳香族側鎖系のいづれにおいても、置換基電子効果は系特異的な共鳴効果の二元性を示し、LSFE式で合理的に高次精密解析できると総括される。
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