研究概要 |
1.隣接SiーSi結合による10^5以上の速度加速と100%シリル基の転位をともなうαーペンタメチルジシラニルベンジルハライド(1)のソルボリシスについて溶媒イオン化能依存性を水性アセトン(A系)、水性エタノ-ル(E系)、水性トリフルオロエタノ-ル(T系)溶媒系で求め、K_0基質であるαートリアルキルシリルベンジル基質(2)と比較検討した。溶媒イオン化能Yxに対してA系ではm=0.9以上の高い感度をもつ直線となる一方、E,T系は上方に大きくズレた分散パタ-ンを示す。興味深いことは(2)も全く同様のmY相関パタ-ンを示すことで、顕著な加速と骨格転位に特徴づけられるにも関わらず、溶媒効果解析は(1)がK_0基質として挙動していることを示しており、シグマ関与の本質に迫る重要な知見である。 2.αー(トリメチルシリルメチル)ベンジルトリフルオロアセテ-ト(3)のソルボリシスにおけるβーケイ素効果を明らかにし、炭素陽イオン安定性におよぼす隣接SiーSiσ結合とCーSiσ結合の効果を定量的に比較した。基質(3)のソルボリシスは溶媒効果、置換基効果、α重水素同位体効果、および活性化パラメ-タ-の解析から(1)と同様の機構で進行することが判明し、3x10^5のβケイ素効果が実測され、陽イオン安定化効果はSiーSi、CーSi結合でほぼ等しいことが明らかになった。 3.2ーフェニルー1ーペンタメチルジシラニルシクロプロピル臭化物のソルボリシスは開環生成物とシリル基が転位した非開環生成物を45:55の割合で与え、ケイ素とシクロプロピル基のσ関与が競争して起こることを示し、一方、2ーアリ-ルエチル系ソルボリシスにおけるβケイ素の導入では、アリ-ル関与は完全に抑制され、kc機構で進行することが明らかになった。
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