大気中微量気体濃度増加による成層圏オゾン層破壊や地球温暖化など地球環境への影響が懸念されている。その中でフロンの使用は国際的に規制され、対流圏でも分解される代替物質の開発が急がれている。これら代替物質や多くの大気汚染物質の大気中寿命を決めるOHラジカル濃度の変遷を知るには、これを支配している大気中のメタンと一酸化炭素および同じくOHラジカルによって支配されている天然起源の塩化メチルなどの大気中における変動や動態の情報が有用である。 本研究では、これら対流圏内で分解されるハロカ-ボン類、一酸化炭素とその供給源となるメタンや低級炭化水素を検出定量するための高感度分析装置を試作し、これら微量気体の大気中における正確な濃度、分布、変動を調べるとともに、南極氷床コア試料中の太古の空気や、大気球で採取した成層圏大気試料の分析により、過去の大気中濃度の変遷や成層圏内の高度分布を調べ、その濃度を支配している要因を明らかにすることを試みる。その成果は以下の通りである。 1)大気中の超微量成分を低温濃縮するために、新たに全金属製真空ラインを製作し、大量の大気試料から微量気体成分を効率的に濃縮する条件を確立した。2)既存のガスクロマトグラフを改造して濃縮大気試料導入部を設置し、低温濃縮した微量気体成分を分離カラムに導入する条件を確立した。3)新たに購入した質量分析型検出器をガスクロマトグラフに接続し、ガスクロマトグラフで分離された各成分を高感度に検出・同定・分析するための各種条件を検討した。4)電子捕獲型検出器の酸素添加による高感度化により塩化メチルや代替フロンの検出・定量が可能になった。5)成層圏大気中の塩化メチルや代替フロンの高度分布が得られた。6)南極氷床コア試料中の過去の大気を抽出し、塩化メチル、メタン、一酸化炭素の測定に着手した。
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