希土類元素相互の放射壊変系であるLaーCe、SmーNd系及び希土類元素パタ-ンをもとにして、原始地殻を中心とする地殻の進化を解明することが、本研究の主要な目的である。 1.グリ-ンランドの38〜28億年の変成岩及び表成岩中の鉄鉱層についての研究を行い、これらの起源物質はコンドライ的ないしは軽希土類元素にやや乏しいマントル的な特徴を示すことを明らかにした。これは、現在広くみられる軽希土類元素に富んだ大陸地殻は、地球形成初期には、あまり発達していなかったことを示唆する興味深い結果である。また、原始地殻ではCe異常は認められず、形成初期の地球表面は、現在よりも環元的であったことを確認した。 2.カナダ盾状地の20〜30億年の花崗岩についいの研究から、同じ岩石区の花崗岩でも、コンドライト的な起源物質と、軽希土類元素に富んだ大陸地殻的特徴を示す起源物質が存在していたことが明らかになった。 3.アジア大陸東部の先カンデリア紀の変成岩の研究を行い、この地域では中国東北部を核として、大陸が成長したことを示す結果が得られた。 4. 中国大陸の新生代アルカリ玄武岩についての研究の結果、中国大陸下の上部マントルが長い期間にわたり、かなり不均質であったことが明確となった。そして、この地域的不均質性は中国大陸のテクトニクスと密接な関連があることを指摘した。 5. Ce、Nd同位体比がチャ-トの堆積環の指標となることを示した。 6. 太平洋、大西洋のマンガン団塊は、Nd同位体比については、両者ともに大陸地殻的な特徴を示した。しかし、Ce同位比では、大西洋の試料は大陸地殻的特徴を示したのに対して、太平洋の試料はマントル的な特徴を示し、両者のCeの供給源に差のある可能性を示唆する結果が得られた。
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