本年度は、都市エアロゾルに焦点を絞り、その有機物組成を解析した。 Nーアルカンは、C_<15>〜C_<37>まで検出されC_<31>に頂点を持つ奇数優位性を示した(奇偶比は、平均で1.7;高等植物では10.石油では1)。しかし、冬には、C_<20>ーC_<24>アルカンが優位を占め、奇偶比は1に近づき暖房等入間活動が大きく反映することが明らかとなった。一方、PAHは、フェナントリンからコロネンまで15種類が検出され、ディ-ゼル排気ガス中に特徴的なベンズフルオランセンが優位を占めた。PAH濃度は冬に最大夏に最小を示したが、これは、(1)温度変化に伴う粒子相からガス相への移行、(2)大気中での光化学的分解によると考えられた。多環芳香族ケトン(PAK)は、PAHと同様な季節変化を示したが、主成分はアントラキノンだった。この結果は、大気中のPAKの主な起源は、PAHの大気中での光酸化ではなく、ディ-ゼル排気ガス由来のものであること、PAKは大気中で光分解を受けやすいことを示唆している。これら中性の化合物のエアロゾルに占める割合は、10^<-3>%であった。 これに対して、低分子ジカルボン酸は、エアロゾルに対して0.1ー2%を占めることが明らかにされた。主成分は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸であり、炭素数が増加するにつれてジカルボン酸濃度は減少した。マレイン酸、メチルマレイン酸も検出されたが、これらシス型不飽和ジカルボン酸は、トルエン等芳香族炭化水素の分解生成物であることが示唆された。ジカルボン酸濃度は夏に高く、一日のうちでは昼に高い傾向を示し、大気中で二次的に生成している事を強く示唆した。 本研究の結果、都市エアロゾル中の有機物組成は、季節的、時間的に大きく変動することが明らかとなった。その原因として、気象条件以外に、(1)排出源の季節変動、(2)大気中での光化学的分解と生成が大きく関与している事が示唆された。
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