研究概要 |
1.遷移金属ホスホネ-ト錯体の光化学 FeとP間に共有結合をもつ錯体、[Cp(CO)_2FeP(O)(OFt)_2]の光照射反応を調べた。Lewis塩基(L=pph_3、P(OMe)_3)共存下で反応を行うとCOが置換した錯体[Cp(CO)LーFeP(O)(OEt)_2]が生成した。これに対してLewis塩基を共存させない条件で光照射を行うと、[4(CO)FeP(O)(OEt)_2]_2が生成した。この反応でもやはりCOが一分子解離して、空いた配位座にホスホリル酸素が配位して2量体を形成したものと思われる。FeーC共有結合は光照射によりラジカル的開裂をするのに対して、FeーP共有結合をもつ錯体ではそのような反応生成物が得られないのは興味深い。 2.リン配位子の金属からCp環への転移反応 [Cp(CO)_2FeP(O)(OEt)_2]にLewis塩基ηーBuLiあるいはLiN(cーPr)_2次いでMeIを反応させるとP(O)(OEt)_2基がCp環に転移した[(C_5H_4P(O)(OEt)_2)(CO)_2FeMe]が得られた。この転移反応の一般性を調べる目的で種々の[Cp(CO)_2FeL]に対して同様の反応を調べたところ、L=P(O)(OMe)(NEt_2)、P(O)(NEt_2)_2、P(O)Ph_2、P(S)(OEt)_2について転移生成物が得られた。従ってこの転移反応はリン上の置換基の種類によらない一般的な反応であることが判明した。FeーP共有結合は上述のように光反応では切断されないのに対して、Lewis塩基アシストで切断されるのは興味深い。 3.遷移金属とリン間に二重結合をもつ錯体の合成 ホスファイト、一置換および二置換アミノホスファイトを配位子とする錯体[(bpy)(CO)_3ML](M=Mo,W)とBF_3・OEt_2との反応によりM=P二重結合をもつ錯体の合成を試みた。その結果L=PN(Me)CH_2CH_2NMe(OR)の場合にはORがアニオンとして引き抜かれMーP間に二重結合をもつ陽イオン錯体[(bpy)(CO)_3M=PN(Me)CH_2CH_2NMe]^+が生成した。またW錯体の場合にはーアミノ置換ホスファイトとの反応でも相当する陽イオン錯体を得ることに成功した。
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