平成元年度においては、つぎの実験研究を行なった。 (1)銅精鉱粒子の反応速度の測定 自熔炉シャフト部における銅精鉱粒子の酸化反応の速度を測定するため、内径15mmの石英反応管内の長さ5cmにわたるサンプルスペ-スにアルミナウ-ルを充填し、これに平均粒子径84μmの銅精鉱粒子10mgを散布し、O_2-N_2混合ガス中で非定常加熱を行い、発生するSO_2力量とサンプルスペ-スの温度の時間的変化を測定した。その結果、炉の設定温度が高いほど、すなわちサンプルスペ-スの加熱速度が速いほど反応速度は著しく上昇した。またO_2-N_2混合ガスの酸素分圧が高くなると当然反応速度は著しく上昇した。この実験では、銅精鉱粒子の着火現象が起こる以前の1270K以下の低温度における反応速度の測定を行った。この結果から反応速度定数の頻度因子を求めると1.2×10^4cm・s^<-1>であった。 (2)1次元ガス流中における銅精鉱粒子の酸化溶融 直径20mm、高さ2mの普通銅製反応管の上部から上と同じ粒子径の銅精鉱粒子をO_2-N_2ガス流とともに落下させ、反応管の3箇所の高さで、落下途上の粒子をサンプリングし、顕微鏡観察とともに硫黄分析を行った。その結果、O_2-N_2ガスの酸素分圧によって反応の進行が著しく影響を受け、PO_2が20kPa以上の場合には、反応管温度が1100K以上、PO_240kPa以上では、反応管上端から60cmの位置で、すなわち炉内滞留時間約0.3秒以内で、酸化反応熱によって粒子が溶融するのが認められた。粒子の酸化反応による発熱量の他に、粒子およびガスに関する熱および物質収支による1次元反応モデルによって解析したところ、反応管上端より20cmの位置で粒子温度は溶融点に達することが明らかになった。今後、反応速度定数について検討するとともに、粒子温度の測定を行うことによって、1次元反応モデルを確立したい。
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