研究概要 |
研究代表者は、これまでZrO_2ーY_2O_3を中心に、立方晶ー正方晶(cーt)無拡散転移および拡散型相分離に関して材料組織学的研究を行ない、多くの実績をあげてきている。そのうちの特に重要な成果は、無拡散的な相転移および拡散型相分離機構の解釈に関するものである。一般に、前者の相転移はマルテンサイト変態であると理解されているが、研究代表者は昨年度得られた実験結果「cーt無拡散転移は、cーt平衡のCーZrO_2側の相境界線から僅かに過冷されたところで開始し、To温度よりも高い温度で生じることおよびこの相転移はいったん開始すると試料全面に亘って直ちに完了する」をもとに、この理解が誤りであることを示し、この相転移が2次相転移の性格を有するものであることを初めて明らかにした。しかし,この新しい解釈は従来の認識をくつがえす全くユニ-クなものであるため、大多数のセラミストの支持を得るには至っていない。 ところが、この新解釈は、材料の相平衡と相変態の研究分野で世界の第一人者であるスエ-デンの王立工科大学ヒラ-ト教授の支持を得るところとなり、今年度は幸いにも同教授と共同で、ジルコニアのcーt相転移の熱力学的解釈を確立することができた。この成果はすでに学術論文として投稿済であり、間もなく印刷される予定である。この論文はおそらく、今後のジルコニアの相転移の理解に大きなインパクトを与えることになるものと自負している。
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