研究概要 |
本研究はセラミックスの焼結温度を下げ緻密化を促進するために用いられた液相焼結時の液相を焼結後,特別な処理によって試料外に排出させ,セラミックスの機能を飛躍的に向上させる機構を解明することを目的に行われた.液相は粒界部に存在しているので,研究は粒界現象,特に粒界に存在する化合物の熱的挙動の解明を中心に行った.研究の対象にした材料は高熱伝導セラミックスの窒化アルミニウムと緩和型誘電材料の鉛複合ペロブスカイトである. 窒化アルミニウム(AlN)は難焼結材料で焼結助剤としてY_2O_3を7wt%程度添加して1800℃で焼結する.焼結時にAlーYーOからなる液相が生成する.室温まで冷却した際の結晶性化合物はY_4Al_2O_9が主であった.この様な高温液相をカ-ボンルツボ中で窒素雰囲気で加熱すると,液相が試料表面に移動し,表面で遷元と窒化反応が起ってAlNとYNおよびY_2O_3からなる表面層を形成した.表面層の生成は気相を経て進むと考えられる.さらに助剤無添加ホットプレスと液相含有AlN焼結体を接合して,同様な遷元処理すると,液相がホットプレス体に拡散し,ホットプレス体中の酸素を除去しながら表面まで拡散する.これによって熱伝導度が2倍近く上昇した. 鉛含有ペロブスカイトPb(Fe_<2/3>W_<1/3>)O_3(PFW)は原料のPbO,Fe_2O_3,WO_3を混合して固相反応によって合成すると,690℃と860℃に液相が生成する.特に860℃の液相は緻密化に重要な役割を果している.この液相を含むPFWを900℃からゆっくり冷却すると表面に液相がしみ出して固化する.この液相はPbーWーO系の化合物で,冷却速度が速いと表面への拡散量は少ない.表面に多く存在している場合でもほとんどが表面から100μm以内にある.この液相を除いた試料には誘電異常がなく,誘電性の向上と液相の有無が重要であることが明らかになった.
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