研究概要 |
本研究は、金属の塩化物、アルコキシドなどが酸化物の表面水酸基との反応により容易に固定化される性質を利用し、新しい金属酸化物薄膜,コ-ティング膜の作製法(表面固定化法)の開発を目指したものである。本年度は,主に多孔質バイコ-ルガラス表面への酸化スズ(SnO_2)薄膜の作製とそのガスセンサ素子への応用の可能性を検討し,以下の知見を得た。 スズプロポキシドのテトラヒドロフラン溶液中に,表面水酸基生成処理を施した多孔質バイコ-ルガラスを浸漬,還流後(液相表面固定化法),600℃,空気中で焼成して得たSnO_2修飾多孔質バイコ-ルガラスのガス(H_2,O_2,CH_4,iーC_4H_<10>)透過能,導電性の変化などについて調べた結果,SnO_2修飾処理に伴うガス透過係数の減少や導電率の増加からSnO_2薄膜の生成が確認できた。ガス透過係数の減少から1回のSnO_2修飾処理で細孔径が分子サイズオ-ダ-で減少し,表面固定化法では1層の薄膜が作製できること,修飾処理の繰り返しによりSnO_2薄膜の膜厚(生成量)の増加とそれに伴うガス透過特性,導電性の制御が可能であることが明らかとなった。さらに,可燃性ガスとの接触による導電性の変化が認められ,表面固定化法で作製した超薄膜でもガスセンサ機能を有すること,そのガス検出特性はSnO_2修飾処理の繰り返しにより変化することが判明した。現在,ガス選択性の賦与がガスセンサにおける大きな課題の一つであるが,ここで得られたSnO_2修飾多孔質バイコ-ルガラスは,SnO_2薄膜のガス検出能と多孔質ガラスのガス分離,透過能を利用し,被検ガスの分子量,大きさといった分子固有の物理量によりガス種を識別する新しいガスセンサ素子としての可能性が強く示唆され,その機能賦与の方法として,分子サイズあるいはSnO_2薄膜1層のオ-ダ-で制御できる表面固定化法が極めて有効であることが明らかとなった。
|