研究概要 |
1.目的 種々の1置換および2置換シクロデストリン(CD)の種々の分光学的挙動のゲスト分子包接に伴う変化を利用する、主として中性有機分子を対象とした分子認識センサ-の開発を目指した。 2.方法 修飾CDとしてダンシル修飾βーCD,フェロセン修飾βーCD、ナフタレン2置換βーおよびγーCD,アゾベンゼン修飾γーCDを合成し、その水溶液中に各種ゲスト分子を一定量添加し、その前後における蛍光あるいは円二色性の強度変化を測定した。 3.結果と考察 ダンシルおよびフェロセン修飾βーCDは,ピレン修飾γーCDと同様にコ-ル酸誘導体に対する感度が高かった。特にダンシル修飾βーCDは会合体形成を必須としないため,ピレン修飾γーCDに比べ高感度化が達成できた。ナフタレン2置換βーおよびγーCDでは、置換基であるナフタレン残基が結合しているグルコ-ス残基の配置の違いに基づき、それぞれ3種と4種の異性体が存在するが、これらの異性体間で、その蛍光パタ-ンが大きく異なっていた。このことはこれらの分子内コンプレックスの形状が異なっていることを意味する。これらにゲスト分子を添加すると、蛍光スペクトルは各異性体間で異なった変化を示した。特にエキシマ-蛍光強度の変化は、同一のゲスト分子に対し増大するものと減少するものがあり、またその変化の程度も大きく異なっていた。このことから、化合物の一斉検知や分別検知が、これら修飾CDを多数組み合わせて使用することにより可能になる、という重要な知見を得た。修飾残基の光異性化により構造変化を起こすアゾベンゼン修飾γーCDの系では、ゲスト分子の存否に対応する円二色性スペクトルパタ-ンの変化が、アゾベンゼン残基のトランス型とシス型では大きく異なっていたことから、このものが、光感応性多重応答型分子認識センサ-として機能することを明らかにした。
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