チグラ-・ナッタ触媒の活性種の同定と構造決定

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01470088
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 曽我 和雄 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (10026180)
• 研究分担者: 塩野 毅 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (10170846)
• キーワード: Ziegler-Natta catalyst / MgCl_2-supported Ticl_3 catalyst / Propylene polymerization / Catalyst isospecificity / Change in isospecificity / Effect of Lewis bases

研究概要

MgCl_2にTiCl_3を担持すると、その担持率に応じて、単核のTi^<3+>種またはクラスタ-状の(Ti^<3+>)nが生成する。前者のTi^<3+>は空配位座を2個持つためアタクチック(ata)サイトとなるが、後者の(Ti^<3+>)nは必ずしも2個の空配位座を取り得ず、1個の空配位座しか持たないアイソタクチック(iso)サイトが副生すると考えられる。本研究においては、この推論を実証するため、Ti担持率の著しく低い(<0.05wt%)TiCl_3/MgCl触媒を調製した。これにまず助触媒としてAlEt_3を加えプロピレンの重合を行ったところ、予期通りata-PPのみが選択的に得られた。ついで、AlEt_3の代わりにCp_2TiMe_2を加えたところ、iso-PPが選択的に得られた。従来、触媒の立体特異性をataからisoに変換する常法として、安息香酸エチル(EB)のようなルイス塩基を添加する方法が用いられてきた。しかし、通常の触媒では、異種の活性種が混在するため、その作用機構の解明は非常に困難とされた。そのような観点から、活性種が均質化されたと考えられる本触媒系において、EBの添加効果についても検討した。その結果、アタクチック活性種のみを与えるAlEt_3系にEBを添加すると、iso-PPが優先的に得られることがわかった。これらの結果を模式的に示すと、つぎのようになる。
TiCl_3/MgCl_2(低担持率)+AlEt_3--→ata-サイト
<--→>^^^<EB>iso-サイト
+Cp_2TiMe_2--→iso-サイト
このように、簡便な方法により、触媒の立体特異性をほぼ完全に変換することが可能となった。この知見は、ルイス塩基の作用機構を含む重合活性種の解明のみならず、高性能触媒の開発のためにも極めて有用と考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Kazuo Soga: "Perfect Conversion of Aspecific Sites into Isospecific Sites in Ziegler-Natta Catalysts" Macromolecules. 22. 3824-3826 (1989)
• [文献書誌] Kazuo Soga: "Propene polymerization with MgCl_2-supported transition metal catalysts activated by Cp_2MtMe_2(Mt=Ti,V,Zr,Hf)" Makromol.Chem.190. 31-35 (1989)
• [文献書誌] Kazuo Soga: "Evaluation of olefin reactivity ratios over highly isospecific Ziegler-Natta catalyst" Makromol.Chem.190. 37-44 (1989)
• [文献書誌] Takeshi Shiono: "A highly non-stereospecific catalyst for propene polymerization" Polym.Bull.21. 19-21 (1989)
• [文献書誌] Kazuo Soga: "Effect of monomer diffusion in the polymerization of olefins over Ziegler-Natta catalysts" Makromol.Chem.190. 995-1006 (1989)
• [文献書誌] Kazuo Soga: "Highly isospecific catalyst for propene polymerization composed of TiCl_4/MgCl_2 and Cp_2 TiMe_2 without donors" Makromol.Chem.,Rapid Commun.10. 293-297 (1989)