研究概要 |
有機非線形光学材料として、高い第二高周波発振(SHG)を示し、大きな第二次分子感受率(β)を持つ化合物が望まれている。我々が新規に合成したスチリルベンゾ[a]キノリジニウム塩型色素は、これまで最も大きなβ値を持つと報告されているスチルバゾリウム型色素の基本骨格を持ち、大きな双極子モ-メントを持つことが分子軌道計算から予想された。そこでまずこれら基本骨格の合成を昨年度に引き続いて詳細に検討した。平成元年度においては、ベンゾ[a]型色素の合成を中心に研究したが、この異性体であるフェナントレン環の湾部位にアゾニア窒素を持つベンゾ[c]キノリジニウム骨格を有する色素類を合成した。まずメチル置換ベンゾ[c]キノリジニウム塩(1__ー)の合成を試みた。従来メチル置換スチルバゾ-ルの熱閉環反応により1__ーは合成されていたが、アセトニトリル中光照射による1__ーの合成を見いだした。この光閉環反応は、立体障害により熱閉環が困難であるメチル体の合成に有効であることが分かった。得られた6種類のメチル体と芳香族アルデヒド類とのKnoevenagel反応を検討した結果、アゾニア窒素のオルト位およびパラ位のメチル基(1ー,3ー,6ーメチル体)が活性であることがわかった。ベンゾ[a]型の反応性の結果ともあわせ分子軌道論的に求めたカルバニオンの安定性、およびフロンティア電子密度で整理できることがわかった。次に3ーメチル体を用い種々の芳香族アルデヒドとのknoevenagel反応により新規シアニンおよびメロシアニン型アゾニア色素類を合成した。その結果ベンゾ[c]型色素はベンゾ[a]型色素より長波長に吸収を持つことが分かった。以上合成できたこれらアゾニア系色素の非線形光学材料としての性能評価にはいたらなかったが、メチル置換ベンゾキノリジニウム塩を基本骨格とする様々な色素の合成方法が確立できたことより、将来の応用への展開が期待できる。
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