レゾルシン-ドデカナ-ル環状四量体の水素結合に基づいた糖の合成化学反応の開発に先立ち糖補足の選択性について検討した。例えばリボ-スは1:1の化学量論で効率良く補足され、I-位の水酸基はα-選択性が非常に高い。グルコ-スは殆んど補足されないがI-位をメチル化したI-メチルグルコピラノシドはうまく補足される。この場合興味深いのは化学量論が2:1(ホスト対糖)であり、I-位の立体化学がβ-選択的であることである。これは上述のリボ-スの場合の結果と一見矛盾であるが以下のように説明できる。すなわちリボ-スと環水酸基が全てシスでありホストとピラノ-ス環の一方向で水素結合すればよく、この水素結合ネットワ-クにI-位の水酸基も含まれるためにはそれもシス、すなわちα-方向を向いていなければならない。ところがグルコ-スの系では環上の置換基は全てトランスでありホストとピラノ-ス環の両面で水素結合したドイッチ型の構造を与えざるを得ず、このような場合にはI-位の置換基がエカトリアル位を占めることができるβ-体の方がアクシャル位のα-体より有利である。すなわち糖のglobalな立体化学と、ホスト-糖の化学量論、localなI-位のジアステレオ選択性が相互に関連していることが明らかとなった。 また合成化学反応の開発という観点からは上述のリボ-ス錯体に四塩化炭素中でナタノ-ルを加えると直接メチルグリコシル化反応が進行することが明らかとなった。これは保護されていない糖の非極性有機溶媒中での直接合成化学反応の最初の例である。
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