研究概要 |
1.1,6,20,25ーテトラアザ[6.1.6.1]パラシクロファンと2,11,20,29ーテトラアザ[3.3.3.3]パラシクロファンを基本骨格とし、架橋部位にLーバリンとピリジンを導入した新規「かご」型シクロファンを合成した。 2.円偏光2色性スペクトルによる検討から、「かご」型シクロファンはキラルな不斉空洞を構築していることが明らかになった。そこで、不斉な分子内空洞に基づくゲスト分子不斉認識能を検討した。ゲスト分子としてLーフェニルアラニン、Dーフェニルアラニン、Lートリプトファン、Dートリプトファンを用いた。これらアミノ酸類に対する結合定数はDーフェニルアラニン、Lートリプトファンに対してそれぞれ8.0x10^2、7.0x10^2 dm^3 mol^<ー1>であり、一方、その鏡像異性体に対しては、結合定数が弱いために算出することができなかった。このことから、「かご」型シクロファンが提供する分子内不斉空洞は光学活性アミノ酸に対して選択的取り込み能を有していることが明らかになった。 3.「たこ」形シクロファンと疎水性ビタミンB_<12>の非共有結合的組み合わせによりビタミンB_<12>人工酵素を構成した。均一有機溶媒中と比較して「たこ」形シクロファンの反応場効果によりビタミンB_<12>依存性酵素反応である異性化反応が極めて効率良く進行することが明らかになった。 4.「タコ」型シクロファンはアニオン性ピリドキサ-ルー5'ーリン酸(PLP)を主に静電効果にもとづいて認識し、比較的親水性の結合部位に包接する。PLP溶液に種々のアルキル鎖長をもつアルキルアミンを添加し、Schiff塩基生成定数(K_<sB>)を求めた。「タコ」型シクロファン添加系では顕著な基質選択性が発現され、「タコ」型シクロファンはPLPと疎水性アルキルアミンから生成するSchiff塩基を安定化する疎水性場を提供することが明らかになった。
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