| 研究概要 |
フォトクロミック分子を光記録媒体として用いようとする時,克服すべき条件には(i)記録の保存安定性,(ii)繰り返し耐久性,(iii)半導体レ-ザ感受性,(iv)非破壊読み出し機能などがある。本研究では、ヘテレ5員環をもつフジアリ-ルエテン分子を化学修飾することにより,これらの機能をあわせてもつ分子に仕上げることをめざした。2,3ービスインド-ルマレイン酸無水物は、620nmに吸収極大をもちその吸収端は800nmにまで達することが認められた。しかし,この分子の閉環体は熱的に不安定であり、暗黒中においても元の開環体へもどる。熱安定性を付与するために、1つのインド-ル環をチオフェン環あるいはベンゾチオフェン環に置きかえた非対称置換マレイン酸無水物を合成した。インド-ル環とチオフェン環とを2,3位にもつマレイン酸無水物の閉環体は595nmに吸収極大を示し,なおかつ熱安定性をもつことが見出された。更に,インド-ル環の5位にメトキン基を,チオフェン環の5位にシアノ基を導入することにより閉環体の吸収極大を680nmにまで長波長化することができた。この閉環体の吸収端は850nmにまで達しており,半導体レ-ザ感受性をもつ。
これらのジアリ-ルエテン分子の繰り返し耐久性を測定した所,ブンゾチオフェン環を2,3位にもつマレイン酸無水物は高い耐久性を示し,酸素存在下で3.7×10^3回,脱気下では10^4回の繰り返しが可能であった。インド-ル環とブンゾチオフエン環とをもつ非対称ジアリ-ルエテンも高い繰り返し耐久性を示し,10^4回の繰り返し後もほとんど劣化を示さなかった。
以上,長波長域に感度をもち,熱安定性,繰り返し耐久性のあるフォトクリミック分子の設計指針を明らかにした。
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