前年度のタイムインタ-バル・ドメイン光子相関計に加えて、本年度はRGBレ-ザ-光源を新規に購入した。3つの波長の選択はソレノイドで動くバンドパスフィルタ-の選択制御によって実行する。二枚の大口径の凸レンズを平行に、同軸上にセットし、その共通焦点の位置におかれた測定セルを凸レンズ面に平行な方向にステッピンクモ-タ-で移動して、散乱角度を変化させる方式を用いた。角度走査の範囲は10〜30°であるが、波長の選択と合わせて、従来の一波長光源の装置と比べると二倍の散乱ベクトル範囲を走査することが可能となった。振動の除去や迷光レベルの低減などの改良点はまだ残っているが、散乱光の強い高分子混合系濃厚溶液の測定には十分利用できる。 前年度に引き続いて実験している、単分散球状高分子電解質ミクロゲルとポリカチオン型線状高分子電解質との混合により形成された錯体の形態は、ポリカチオン鎖の吸着層を表面に一様に持つコア/コロナ型であり、コロナ部分はいわゆる電気泳動的にす抜け鎖として挙動していると説明される。 本年度はじめたポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩にカチオン型界面活性剤を添加して形成した複合体の電気泳動光散乱測定では次の結果が得られた。高分子電解質の分子量が低い場合には界面活性剤が著しく吸着した複合体とほとんど吸着していないものとの二相が共存する。これは界面活性剤同士の分子間相互作用が強く、既に吸着したものに続いてその隣のサイトにさらに界面活性剤が吸着する確率が高くなるためである。この現象は生体系の反応では理論的に予測されており、実験的にはHillプロットとして解析に利用されている。しかしそれらの共存する二相は実験的には測定できなかった。今回のようなモデル実験で理論の予想する二相共存が実証されたのは初めてである。
|