1.新規に購入したタイムインタ-バル・ドメイン光子相関計システム(TIDCー100S)とRGBレ-ザ-光源を用いて、時間分割静的並びに動的光散乱測定装置を試作した。光学系は回転式ゴニオメ-タ-の欠点である運転時の振動による測定の撹乱を避けるために、大きな凸レンズを2枚平行に組合せて、その真中の共通焦点にあたる位置に測定セルを設置する特殊な光学系を設計し、散乱角度の変化はセル台を一軸方向に移動する方式である。光電子増倍管による散乱光の取り込み、そのゲ-ト時間の設定、光源波長の選択などの制御のために、コンピュ-タ-ソフトウエアを開発した。相関関数の演算はTIDCー100Sシステムへのデ-タ転送によって実行した。散乱角度10〜30°と三つのRGB波長の切替えによって可変できる散乱ベクトルqの範囲は、通常の一波長光源を用いる装置の二倍の幅となった。静的光散乱測定では100ms程度の特性時間を持つ現象を解析できる。一方、動的光散乱は30秒毎に相関関数を出力することが可能であった。 2.TIDCー100Sと電気泳動光散乱光学系の組合せにより、高分子電解質錯体の電気泳動移動度を測定する。 (1)単分散ポリスチレンラテックスのスルホン化によって合成した単分散球状ミクロゲルの電気泳動移動度を添加塩濃度の関数として求め、実験結果と理論との比較検討を行なった。このようなミクロゲルは表面に溶媒流が浸透するす抜け鎖をもつ粒子で近似できることがわかった。 (2)単分散ミクロゲルと線状ポリカチオン鎖より成る高分子電解質複合体の電気泳動光散乱測定の結果を、大島一近藤理論にもとずいて解析し、これらの錯体は表面に電気泳動的にす抜けのポリカチオン鎖の吸着層を持つ球状のコア/コロナ型粒子であると結論された。
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