研究概要 |
レ-ザ-光を用いる動的光散乱法は、高分子が希薄溶液中でブラウン運動をする際の流体力学的挙動を鎮セグメントのレベルで議論することを可能にし、この挙動がナビア・スト-クス(N-S)方程式を“おそい流れ"の近似の下に解く従来のオゼ-ン手法の理論体系では記述し得ないと結論した。本研究は、N-S方程式がオゼ-ン近似なしに厳密に解ける状況が一方向流れの場で実現することに着目する。即ち、この状況下の高分子溶液に動的光散乱法を適用し、その拡散挙動を観察・解析することから“新しい記述法"を見い出そうとする。この際、一方向流れの場を正確につくることが最大の要点となり、本年度の研究計画の主眼もここにある。 1.流れの場発生機とその監視モニタ-、流れの場を提供する二重円筒型回転セル(石英製)とその恒温バス室を組み立て、内外筒間隙にセットした高分子溶液に一方向流れの場を与える状況を作り上げた。 2.光学レンズ系システムによりレ-ザ-光源を上述の二重円筒型回転セル(外径20mmφ、内径6mmφ)の内外間隙2mmに、円筒軸に沿って、導入した。入射レ-ザ-光断面は0.1mmφまで絞った。しかし、内筒を駆動すると、間隙内のレ-ザ-光路は僅かながら時間変動した。これは円筒セル間隙が円筒軸に沿って一様でないこと、円筒両端に流れの乱れ(端効果)が発生することに起因する。現在、セルの修正を進めている。 3.流動場システムを動的光散乱システムを既設コンピュ-タで結合し、流動場からの高分子の光散乱強度を時間相関器で観測し、時間相関関数を求めた。しかし、上述したレ-ザ-光路の僅かな時間変動が時間相関関数の精密な測定を困難にし、高分子の拡散係数を求めることを困難にしている。しかし、この問題は装置の改良で解決出来るので(4),(5)の本格的な動的光散乱実験による拡散係数の測定には支障をきたさない。
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