研究概要 |
分子内に親水性セグメントと疎水性セグメントをもつ両親媒性ポリエチレンオキシド(PEO)マクロモノマ-は,媒体に依存してさまざまな溶存状態,会合状態をとり,それに応じて特異的な重合挙動を示すことが期待される。本研究は,末端基構造,鎖長の異なるマクロモノマ-の合成,重合挙動,界面化学的性質を詳細に,系統的に検討することによって,組織化重合の基本的知見を得ることを目的とした。主な成果はつぎのとおりである。 (1)ωー末端にヒドロキシル,メトキシ,nーブトキシ,tーブトキシ,nーオクチルオキシ,またはnーオクタデシルオキシ基を含み,αー末端にpービニルベンジル,メタクリロイル,またはpースチリルアルキル基を含むPEOマクロモノマ-を,アニオンリビング重合を基本として合成した。分子量分布は単分散に近く,末端基純度も高いことを,GPC,NMRから確認した。また,非重合性のマクロモノマ-モデルとして,αー末端ベンジルまたはイソブチロイル基をもつPEOも合成した。(2)各マクロモノマ-の水中の単独重合性は,ベンゼン中あるいは通常の低分子量モノマ-の重合と比較して,圧倒的に高く,またαー重合性末端のみならず,ωー末端基,およびPEO鎖長に強く依存した。(3)非重合性PEOモデルポリマ-の光散乱から,ベンゼン中では分子分散溶解するのに対し,水中ではミセルを形成し,ミセル内会合度/ミセル体積から評価したマクロモノマ-のミセル内密度と相対的重合速度の間に平行関係があることを認めた。(4)これらの結果から,水中におけるマクロモノマ-の異常に速い重合はミセル形成に伴う組織化によって,疎水性末端二重結合の局所的濃度と配向性が増大したためと結論した。得られるポリマ-は,固定化ミセルあるいは星型高分子モデルとして興味深く,光散乱,GPC,粘度測定によって,溶液中で非常にコンパクトな構造をとることが確認された。
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