研究概要 |
本研究は、光感応性非天然アミノ酸を、タンパク質の一次シ-ケンスの特定部位に導入して、光により酵素機能を制御できるようなシステムを開発することを目的とする。ここでは、天然に存在する酵素を改質して変異酵素を得るセミシンセシス法により、変異ホスホリパ-ゼA_2を合成する。初年度においては、i)ホスホリパ-ゼA_2に存在する9個のリシン残基の側鎖アミノ基の選択的アミジン化、ii)エドマン分解による、ホスホリパ-ゼA_2のN端側の3残基の切断、iii)非天然アミノ酸を含むトリペプチドの合成、を行った。以下に、その概要を説明する。 i)Trp^3を光感応性非天然アミノ酸であるアントリルアラニン(ant-Ala)で置換した変異酵素は、導入したアントリルアラニンの光励起によりTyr^<69>との間で電荷移動錯体を形成し、変異酵素の脂質膜への分配が変化すると考えられる。アントリルアラニンの導入のため、ホスホリパ-ゼA_2のN端側からAla,Leu,Trpの3残基をエドマン分解により切断するが、あらかじめLys残基の側鎖アミノ基をアミジノ基で選択的に保護した。この選択的アミジン化は、pH10.5でホスホリパ-ゼA_2とメチルアセチミデ-トとを40分反応させる操作を、数回繰り返して行った。これにより、従来行われていた7個のアミノ酸をN端側に有する酵素前駆体を用いる必要がなくなった。反応後、ODSカラムを用いたHPLC法により精製した。ii)エドマン分解を繰り返して、N端側の3残基を切断した。生成する各アミノ酸のPTC誘導体をTLCで検出して反応の進行を確認した。iii)アントリルアラニンを合成し、Boc-Leu-OSu(OSu:コハク酸イミドエステル)およびBoc-Ala-OSuと順次反応させ、Boc-Ala-Leu-antAla-OHを合成した。次年度においては、切断した酵素と合成したトリペプチドの縮合反応を行い、目的の変異酵素を得て、その特性解析を行う。
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