研究概要 |
1.性染色体ヘテロクロマチンの構成成分としての湾曲反復DNA:本研究ではクロマチンの超構造のモデルとしてニワトリの雌特異的性染色体であるW染色体をとり上げ、DNA-タンパク質相互作用の面からその機構を解明することを目的としている。先ず、ニワトリW染色体DNAの約60%を占めるXhoI-ファミリ-反復配列の反復単位である0.7kbXhoI断片のクロ-ンをプロ-ブとして、60%の塩基不対合を許容するハイブリッド形成条件を適用して、シチメンチョウ、キジのW染色体を構成する反復DNA単位0.4kbP'stI断片、0.5kbTaqI断片をそれぞれクロ-ニングして塩基配列を決定した。その結果、いずれの配列もXhoIファミリ-配列と同様にAクラスタ-、Tクラスタ-を含む約21bpの基本単位が縦列重複した配列構成をもつことが明らかになった。そしてこれら3種の反復単位がいずれも典型的な湾曲(bent)DNA分子であることが電気泳動移動度の異常から示された。このように塩基配列の共通性は限られているが、配列構成の上で、また湾曲性の点で極めて類似した性質を示す反復DNAが3種のトリのW染色体に含まれることは、W染色体の凝縮(ヘテロクロマチン化)を考える上で重要な要素であると思われる。 2.湾曲反復DNAに結合するW-protein:ニワトリ肝臓の核から精製された分子量72KのW-proteinは約30分子からなる会合体を形成し、この周りにXhoIファミリ-配列がA,Tクラスタ-部分で結合しながら巻き付くようにDAN-タンパク質複合体を形成することが示唆されているが、シチメンチョウの0.4kbPstI配列、キジの0.5kbTaqI配列もW-proteinと同様な結合様式で複合体を形成することがDNaseIフィットプリント法で示された。今後は反復DNAのクロマチンファイバ-とW-proteinの相互作用の解析を行う必要がある。
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