研究概要 |
クロマチンの超構造のモデルとしてニワトリの雌特有の性染色体であるW染色体が核内で形成するヘテロクロマチンボディ-と転写不活性時のフィブロインH鎖遺伝子が形成する異常凝縮クロマチンを取りあげ,それらの構造解析を行った。 1、Wヘテロクロマチンボディ-の構造 既に報告したW染色体DNAの約60%を占めるXhoIファミリ-反復配列と約68%の相同性を示すEcoRIファミリ-反復配列を見出し,その1.2Kb反復単位のクロ-ニングと塩基配列決定を行った。1.2Kb単位はXhoIー0.7Kb反復単位と同様に約21bpの基本単位が縦列重復した構造を有し,高度湾曲DNAであり,ゲノム中では高度にメチル化修飾を受けていることが明らかになった。湾曲反復DNAとして共通の特徴をもつXhoIおよびEcoRIファミリ-配列に高親和性結合する非ヒストンタンパク質が核内に複数種存在することを見出し,2種のその様なタンパク質の部分精製を行った。 2.転写不活性時のフィブロインH鎖遺伝子のクロマチン構造 カイコの5令期の中部絹糸腺,4眠期の後部絹糸腺ではフィブロインH鎖遺伝子の転写は不活性状態にある。これらの絹糸腺の単離核にマイクロコッカルヌクレア-ゼを作用させたところ,H鎖遺伝子のクロマチンはゲノムDNAの平均的なクロマチン構造に較べ著しく抵抗性であることが示された。比較的高濃度のDNaseIを作用させた場合には,H鎖遺伝子クロマチンは規則的なDNA鎖長からなる分解物を与えた。この規則性はH鎖遺伝子中の結晶部に対応する繰り返し配列にヌクレオソ-ムが高密度で形成される一方,非結晶部に対応する配列部分は比較的ヌクレア-ゼ感受性となるようにクロマチンファイバ-の編成が行われるためであることを示す結果が得られた。
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