研究概要 |
ペプチジルアルギニンデイミナ-ゼ(PADと略記)はペプチド鎖中のArg残基をCit残基に変換する新しい蛋白質修飾酵素である。生体内にはArg残基が活性発現に必須とする酵素など生理活性蛋白質も多く、本酵素の生体制御への関与が推定される。本研究は従来不明であった本酵素の一次構造の解明、および遺伝子発現調節機構解明への第一歩として同酵素遺伝子の構造解析を中心に研究を進めた。 1.本酵素アイソザイムの分離とその性質の比較;マウスには基質特異性、分子量および抗原性の異なる3種のアイソザイムの存在を見出し、イオン交換カラムからの溶出順にI型,II型およびIII型とした。I型は表皮と子宮(II型も存在)に、II型は表皮と手のう以外の多くの組織に、そしてIII型は表皮と毛のうに存在することを明らかにした。 2.本酵素cDNAのクロ-ニングと、同酵素全一次構造解析;エストロ-ゲン投与後のマウス子宮よりpoly^<A+>RNAを調製しλgt11cDNAライブラリ-を作成、PADのcDNAクロ-ンを得た。その塩基配列とPADのN末端構造の解析の結果より本酵素の全一次構造が推定された。N末端はFAB/MS分析機によりNーアセチルメチオニンと決定され、673アミノ酸よりなり、分子量76,260の蛋白質であると決定された。 3.本酵素ゲノムDNAクロ-ンの分離とその構造;マウス子宮PADのcDNAをプロ-グとしてマウス肝臓ゲノムDNAの制限酵素解裂フラグメントとのハイブリダイゼ-ションより単コピ-ジンであると判定された。次にcharon28ベクタ-にクロ-ニングされているマウスゲノムライブラリ-により合せてcDNAの65%をカバ-する2つのクロ-ンを得ている。 4.本酵素cDNAの大腸菌での発想;マウス子宮cDNAライブラリ-から得た2つのλファ-ジクロ-ンをEcRIで切り出し、繋ぎ合せ、大腸菌発現べクタ-pkk223ー3に組み込み、大腸菌での発現を検討中である。
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