豚心臓筋肉から筋原線維を調製して、種々の条件下でできる加熱ゲルのずり弾性率を測定し、骨格筋のそれと比較した。心筋筋原線維の加熱ゲル形成の至適条件は、0.6MNaCl、PH6.0、加熱温度60℃を示したのに対し、骨格筋筋原線維では0.6MNaCl、PH5.7、加熱温度50℃であった。しかし、心筋筋原線維の加熱ゲルは骨格筋のそれよりも弱かった。筋肉を熟成すると、骨格筋の7日間熟成が最も強いゲルを形成した。心筋の場合も同様であったが、骨格筋で示されたような大きな差は認められなかった。心筋および骨格筋の筋原線維のPHの違いによるタンパク質の溶解性変化においても、骨格筋の7日熟成のものが最も高い値を示し、心筋よりも骨格筋の方が高い溶解性を示した。また、骨格筋筋原線維の溶解性はPH5.7で、心筋ではPH6.0で最大となった。これらのことから、溶解性と加熱ゲル強度は密接な関連のあることが明らかとなった。加熱ゲルの走査型電子顕微鏡による微細構造観察結果は、ゲル構造とゲル強度の明らかな関係を示している。さらに、SDSゲル電気泳動法によると、トロポミオシン、トロポニン、ミオシン軽鎖などがゲル形成にほとんど関与しないことも示唆される。示差走査熱量測定結果は、熟成7日の骨格筋筋原線維が他の試料に比べ低い融解温度を示した。また、加熱変性に要するエンタルピ-変化は骨格筋と心筋の筋原線維で、熟成0日と7日目との間にそれぞれ差のあることが明らかになった。鶏筋骨から調製したアクトミオシンの加熱による動的粘弾性は、PH6で50℃近辺で極大を示した後、85℃まで徐々に上昇する傾向であった。しかし、この系にCa^2を加えると、50℃近辺の極大ピ-クは低くなり、80℃でのゲル強度は対照区の1.5倍にもなった。また、この条件下でカルモジュリンを加えてもゲル強度には影響がなかった。しかし、PH5では、Caーカルモジュリンのゲル強度増強効果が明らかとなった。
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