肉畜の骨格筋は食肉製品に広く利用されている。これは骨格筋が優れた加工適性を示すからである。一方、動物の内臓などを構成している平滑筋や心臓を形成している心筋は、タンパク質食料源として有望視されているにもかかわらず、食肉製品としての加工適性に劣るためにほとんど利用されていない。これまでの研究から、これら筋肉間の加工適性の違いは、筋肉の主構成タンパク質のミオシンの食品化学的特性の違いによることが判明した。そこで本研究の当該年度は、平滑筋ミオシンの特性を明らかにするために以下のように実験し、検討した。 鶏筋胃から平滑筋アクトミオシンを2種類の方法で調製した。1つは抽出液にPMSF(phenyl methyl sulfonyl fluoride)を加えて調製したアクトミオシン(YAM)で他は、PMSFを加えていない塩溶液で調製したアクトミオシン(BAM)である。それぞれのアクトミオシンの加熱ゲル形成能を加熱温度を上げながら測定すると、YAMでは50〜60^。Cに2つのピ-クが観察された。これに対してBAMは90^。C加熱までゲル強度が直線的に上昇した。この違いはSDSー電気泳動から明らかにされたごとく、それぞれのアクトミオシンを構成しているタンパク質組成の差によるものである。Ca^<2+>やMg^<2+>などの金属イオンはYAMおよびBAM両者の加熱ゲル強度を増強した。これは、金属イオンにより、ミオシンの高次構造が変化したためか、金属結合によりアクトミオシンのゲル構造が補強されたためと思はれる。これら2種類のアクトミオシンは、いずれもミオシンをCaとカルモジュリンでリン酸化することにより、加熱ゲル強度は上昇した。BAMで約1.5倍、YAMで2倍それぞれ対照区よりも高いゲル強度を示した。この効果は、平滑筋ミオシンのリン酸化によりミオシン分子の尾部の構造変化が起り、加熱により尾部間の相互作用が促進されたことによるものと考えられた。
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