メチオニンエンケファリン、ロイシンエンケアァリンおよび4番目のフェニルアラニン残基をトリプトファンに置換した〔Trp^4〕メチオニンエンケファリンを、脂質(ジパルミトイルホスファチジルコリン)リポソ-ムに埋めみ、213nmおよび240nm励起の紫外共鳴ラマンスペクトルを測定した。これまで蓄積した基礎デ-タを基にスペクトルの詳しい解析を行った結果、多くの重要な知見を得た。また、ラット脳よりδ型オピオイドレセプタ-を抽出、精製し、紫外共鳴ラマン及び円偏光二色性スペクトルを測定、解析することによりレセプタ-の構造を検討した。以下に結果を記す。 1.上記エンケファリンのいずれも水溶液中では多種の延びたコンフォメ-ションをとるが、脂質膜に結合している状態では、折れ曲がった主鎖コンフォメ-ションをとる。 2.チロシン側鎖は脂質膜の内部疎水領域に埋もれているのに対し、フェニルアラニン(またはトリプトファン)側鎖は、膜外側の極性領域に存在するか、または膜表面に突き出ている。 3.チロシン側鎖の膜内への埋まり方は、上記3種のエンケファリンのうちロイシンエンケファリンでは浅い。 4.チロシン側鎖が膜に埋もれているほど、レセプタ-との結合も活性も増す。 5.生体膜は活性上重要なチロシン側鎖を疎水環境下に保護することにより、エンケファリンが酵素などにより分解されにくくする。 6.レセプタ-はβーシ-ト型主鎖構造が多い蛋白質であり、芳香族アミノ酸残基、特にチロシンとトリプトファン残基をほとんど含んでいない。
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