セリン又はトレオニンに結合している糖鎖(Oー配糖体)はムチン、プロテオグリカン、免疫グロブリン、ホルモン等広く存在しているものである。従来よりOー配糖体糖鎖の構造研究にはアルカリーボロヒドリドによる切り出しや酵素を用いている。一方我々は糖鎖の還元末端を蛍光標識して高感度に分析する蛍光標識法を開発しNー配糖体糖鎖に応用して来た。この方法をOー配糖体糖鎖にも応用することを本研究で試みた。 アルカリーボロヒドリド法では切り出した糖鎖の還元末端が糖アルコ-ルとなり蛍光標識されない。このため新しい切り出し方法の開発が必要となる。このため糖蛋白質よりOー配糖体糖鎖を含む糖ペプチドと蛍光標識したOー配糖体糖鎖を調製し、それらの構造をGCーMS等で同定した。これらの標準試料を用いてOー配糖体糖鎖の切り出し方法を検討した。糖ペプチドより切り出した糖鎖は蛍光標識後HPLCにより分離定量した。種々の切り出し試薬を検討した結果、無水ヒドラジンが最も良い結果を与えた。無水ヒドラジンを用い糖ペプチドより糖鎖を切り出し、Nーアセチル化、蛍光標識化をして、HPLCで定量をし、切り出しの条件を検討したところ、糖ペプチドから蛍光標識糖鎖までの収率は最良で50%であった。コントロ-ル実険の結果、Nーアセチル化の反応や蛍光標識等での収率を補正すると、Oー配糖体糖鎖の収率は約80%であった。この方法を天然のOー配糖体を持つ糖蛋白質に応用したところ、期待した通りのOー配糖体糖鎖の蛍光標識物が得られた。
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