研究概要 |
ウシ心筋ミトコンドリアよりチトクロムbc_1複合体をRieskeの改良法により抽出精製し,最終標品に含まれるコ-ル酸を非イオン界面活剤シュクロ-スモノラウレ-トにより置換した。これにシュクロ-スを含むポリエチレングリコ-ル4000を加えることにより,室温で約1〜2週間後に大きい(1.4×2.1mm)赤い平行六面体の結晶をうろことに成功した。サブユニット構成,吸収曲線などすべて期待通りであった。再現性も高く,大量に調製が可能となり,各種の条件の検討を進めている。この結晶のX線回析パタ-ンを解析したところ38A^^°分解能以上に解析可能と判明した。ただし,この結晶は機械的衝撃に弱く,かつ空気中でも次第に変性するので,短時間内の実験を要する。C_1の2成分複合体の結晶化はその後進展しなかった。ユ-グレナのチトクロムCは不安定で漸く還元型で精製することにより安定化されることをつきとめた。一方酵母のチトクロムC_1の推定ヘム配位子Hisー44とMetー164をそれぞれPhe,Tyrー44とLeu,Lysー164に変異させそれの導入と生育,スペクトル,膜内分布をしらべ,予想通りHisとMetとがヘム鉄への配位子であろうと示唆することができた。また70番目近傍の酸性領域はチトクロムCとの結合には必ずしも重要な役割を果していないことが判明した。またウシNADH脱水素酵素複合体のサブユニット13kDaA,Bおよび30kDa,20kDaの全構造並びに部分構造を決定し,その中に鉄・硫黄クラスタ-を形成しうる構造を同定しえた。丁度細菌型フェレドキシンと類似のアミノ酸配列をしていることが判った。今后はbc_1複合体の結晶構造解析に力を入れることとなろう。
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