研究概要 |
1)ウシ心筋ミトコンドリアよりチトクロムbc_1 複合体を改良調製しその定常状態での速度論的解析から、QH_2からチトクロムcへの2電子移行はピンポン機作によることが判明した。2)この標品に庶糖を含むポリエチレングリコ-ルを加え室温で1〜2週間放置すると1〜2mm角の赤い平行六面体の結晶が折出した。再現性もよく、大量調製も可能である。3)この結晶のX線回折パタ-ンは8A分解能以上の解析が可能であることを示唆した。ただこの結晶は機械的衝撃に弱く、かつ空気中で除々に変性するので今一歩各種条件の改良が必要である。4)ユ-グレナのチトクロムcの精製は還元型で行なうと良好な結果をえたので、現在大量精製続行中で結晶化を試みる段階である。5)ユ-グレナのチトクロムc_1cDNAの全塩基配列を決定した。他の生物起源のc_1と比較し、鉄への配位子(His,Met)、膜結合部位の共通性を指摘した。また、ヘムCのペプチド鎖への結合部位はただ1ケ所のCysー42のみであり、他のc_1でみられるもう1所のCysー39はPheで置換されていることを確実にした。6)酵母のチトクロムc_1の部位特異的変異を鉄配位子に導入し(His44Phe,Tyr;Met164Leu,Lys)、それぞれがc_1の構造やbc_1複合体への組み込みに重要な役割を演じていることを示した。7)ペプチド部位欠損実験から酵母c_1でチトクロムcと接触すると考えられた2ケ所の酸性領域の1ケ所(70番附近)は必須ではないと結論できた。8)ウシ心筋ミトコンドリア複合体Iの13KDa(2種),30kDa,20KDaサブユニットを単離し、その全構造、部分構造を決定し、細菌フェレドキシンに類似の構造を見い出した。9)藍色細菌のチトクロムb_6fがチトクロム酸化酵素に電子を伝達し、その折チトクロムC_<553>が働いていることを示した。
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