エチレン生合成は傷害またはオ-キシンなど異なった刺激で誘導されるが、ともに1ーアミノシクロプロパンー1ーカルボン酸合成酵素(ACCS)が生合成の律速酵素となっている。傷害誘導酵素とオ-キシン誘導酵素は免疫化学的に異なることが明らかになっているので、本研究は傷害誘導酵素とオ-キシン誘導酵素のcDNAの構造比較から異なった遺伝子の発現によることを証明することを目的としている。 本年度はオ-キシン誘導ACCSの精製と、cDNAの単離、塩基配列を決定することを目的とした。未熟キウリ果実の切片をオ-キシン処理し、誘導されたACCSをイオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフにより高度に部分精製した。この部分精製酵素を14CーSーアデノシルメチオニンの存在下に酵素反応を進行させて酵素を特異的に放射化した。放射活性を指標として高速逆相クロマトグラフィ-、ゲル電気泳動的に単一の成分とした。精製酵素の臭化シアン分解し、得られたペプチドを分離してアミノ酸配列を決定した。アミノ酸配列に基づいて合成した4種の合成DNAをプロ-ブとしてノ-ザン分析の結果1種の合成DNAがオ-キシンで誘導される、1.9kbのmRNAと分子会合した。この合成DNAを用いて、cDNAライブラリ-を選別し2種の陽性クロ-ンを得た。制限酵素分析の結果、2種のcDNAは同一のものと判定したので、その1種について塩基配列の概略を決定し、全鎖長cDNAであることが確認された。塩基配列の中には酵素の部分アミノ酸配列を満足する配列が存在したことから目的のクロ-ンと同定した。完全な塩基配列は決定中である。ノ-ザン分析の結果、傷害型酵素のmRNAとはサイズは同一であるが全く分子会合せず、塩基配列の相同性は約50%に過ぎなかったので、オ-キシン型酵素は傷害型酵素とは別の遺伝子産物であることが実証された。
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