エチレンは高等植物のおいて植物ホルモンとして重要な役割を果たしており、生成速度はいろいろな刺激で変動する。すなわち、エチレン生合成の律速酵素であるアミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)合成酵素はオ-キシン、組織傷害、果実追熟等異なった刺激によって顕著に誘導形成される。本研究は異なった刺激で誘導されるACC合成酵素の分子間差異を分子レベルで証明することを目的とし、以下の成果を得た。 カボチャ果実の傷害誘導ACC合成酵素を分離、精製し、その特異抗体を用いてcDNAを選別クロ-ン化した。得られたcDNAの全塩基配列を決定し、傷害誘導ACC合成酵素の推定1次構造を提出した。本cDNAの同定は、推定1次構造中には精製酵素で決定した部分アミノ酸配列が見いだされたこと、cDNAが大腸菌にて活性酵素を発現したことから確定した。本酵素のmRNAは無傷組織では検出出来なかったが、果実、胚軸ともに傷害を与えるて初めて検出されたので、その遺伝子は傷害刺激で発現するものである。 カボチャのオ-キシン誘導酵素のmRNAは傷害誘導酵素のcDNAと相補的分子対合をしなかったのでオ-キシン誘導酵素のcDNAをクロ-ン化するために、オ-キシン誘導酵素を精製して部分アミノ酸配列を決定した。その配列に基づいた合成オリゴDNAを用いてオ-キシン誘導酵素のcDNAをクロ-ン化し、全塩基配列を決定した。オ-キシン型cDNAの構造は6箇所の保存された領域を除き傷害型cDNAと顕著に異なることが明らかとなった。オ-キシン型遺伝子は胚軸をオ-キシン処理した場合のみ発現した。したがって、カボチャではオ-キシン型酵素と傷害型酵素は発現刺激の異なる2種遺伝子に規定されることが証明された。またトマトではオ-キシン型、傷害型、追熟型酵素は発現刺激の異なる3遺伝子に規定されることを証明した。
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