研究概要 |
アオウキクサ水摩砕物の遺沈沈澱(pellet)セルラ-ゼその他いくつかの市販酵素標品を混ぜてインキュベ-トすると、花成誘導物質(FIS)がつくられることは昨年報告した通りである。これらの酵素標品には共通してチロシンが含まれており、チロシンと pellet を共にインキュベ-トすると、FIS がつくられる。そして、この反応は窒素気中やアスコルビン酸存在下ではおこらない。カテコ-ルアミンも pellet と共にインキュベ-トすると活性を示すようになり、なかでもノルエピネフリン(NE)は非常に有効である。NE はアオウキクサの水抽出物中に相当量含まれており、同量の植物体抽出物から得た pellet と NE を混ぜるだけで、粗抽出物と同じ程度の活性が得られ、水抽出物の活性はほとんどすべて NE の関与する FIS だけで説明できる。 無傷のアオウキクサを NE 溶液に浸しておくだけでも外液は活性を示すようになるが、アオウキクサを浸しておいた水に NE を加えても活性は現われない。また、NE を KOH 溶液に溶かすと、ある条件下ではかなり高い活性が現れるが、その条件(NE、KOH の濃度、反応時間等)極めて微妙かつ複雑である。これらの結果は FIS が NE からつくられる物質であることを示唆する。 アオウキクサ水抽出液の活性フラクションは、 ^1H ^<13>C NMRにおいて解析不能な幅広いシグナルを与える。そして, ^<13> CPーMAS NMR はメラニン様スペクトルを示す。MS では EI,FAB,SIMS,FD の何れのイオン化でも有意なイオンは検出できないが、元素分析より、炭素 53%、水素 7%、窒素 8%、酸素 33% の組成比が与えられた。これらの結果などから、活性成分はカテコ-ルアミン由来のメラニン前駆体様物質であると考えられ、このことは、FIS がNE からつくられるという結論と矛盾しない。
|