チラコイドにおける機応分子の量的構成の調節による光合成機能の維持

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480017
• 研究機関: 岡崎国立共同研究機構
• 研究代表者: 藤田 善彦 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (40013560)
• キーワード: 形成調節 / 光合成 / 光化学系I / クロロフィルa / チラコイド / チトクロムb_6ーf / チラコイド / 電子伝達 / ラン藻

研究概要

ラン藻Synechocystis PCC6714を用いて、光合成光条件による光化学系Iの形成調節について、(1)調節と電子伝達との関係、(2)形成調節が起る反応段階の特定に焦点をおき解析を行い以下の結果をえた。
(1)光化学系I形成が促進される光条件のもとでの電子伝達状態を閃光分光法で解析し、チトクロムb_6ーfが著しく還元状態となると形成が促進されることを見出し、その時のチトクロムfの閃光による酸化・還元パタ-ンの解析からチトクロムb_6の還元状態が光化学系I形成調節の信号となるとの推定をえた。
(2)光化学系I形成の調節とクロロフィルa合成との関係をクロロフィルa合成阻害剤を用いてのモデル実験系により調べ、クロロフィルa合成経路の活性制御により光化学系I形成が選択的に調節されることを証明した。この活性制御の効果と光誘起調節との関連の解析から、クロロフィルa合成の調節が光化学系I形成の調節に働いているとすると、その制御部位はクロロフィルa分子の合成段階ではなく、クロロフィルaが光化学系I形成が起る膜部位へ供給される過程であることを示唆する事実をえた。
(3)チラコイド電子伝達系の光化系I以外の末端因子であるチトクロム酸化酵素について、その活性調節を調べ、光化学系Iと同様に光条件などによる電子伝達状態に対応した調節がおこることを示す事実をえた。従って、ラン藻のチラコイドでは、電子伝達状態により2種の末端因子の形成調節がおこり、電子伝達効率の維持が果されているものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 藤田善彦,岩間由美,大城香,村上明男,萩原直樹: "Regulation of the size of light-harvesting antennae in response to to light intensity in the green alga Chlorella pyrenoidosa" Plant Cell Physiology. 30. 1029-1037 (1989)
• [文献書誌] 藤田善彦,村上明男,大城香: "Regulation of the stoichiometry of thylakoid components in the photosynthetic system of cyanophytes:model experiments showing that control of the synthesis or supply of Chl a can change the stoichiometric relationship hetween the two photosystems" Plant Cell Physiology. 31. 145-153 (1990)
• [文献書誌] S.P.Adhikary,村上明男,大城香,藤田善彦: "Photoregulation of respiratory activity in the cyanophyte Synechocystis PCC 6714:the possibility of the simultaneous regulation of the amounts of PS I complex and respiratory terminal oxidase in thylakoids" Plant Cell Physiology.
• [文献書誌] 藤田善彦: "Regulation of stoichiometry among thylakoid components in response to light regime:a story of the dynamic nature of the cyanobacterial thylakoid system." Regulation of Photosynthetic Processes(Kanai,R.,Katoh.S.and Miyachi,S.eds),special issue of Botanical Magazine.
• [文献書誌] 藤田善彦: "光条件は光化学系の量的構成を変えるーチラコイドの動的姿の一つの表われー" 植物細胞工学.