研究概要 |
ラン藻synechocystis PCC6714を用いて,光条件による光化学系I複合体の形成調節機構の解析を(1)形成調節信号にかゝわるシトクロムb_6とChla合成の関係,(2)Chla合成とPSIアポたん白合成との関係を以下のように解析した。 (1)Pchllideレベルの変動を指標として,この変動がChla合成の末端での抑制的な調節であることを先ず明らかにし,PSI合成が促進される時,その抑制が解除されることを見出した。シトクロムb_6酸化反応によりこの抑制解除が誘起され,従って,HQNOにより,シトクロム酸化が阻害されると,同時に抑制解除も阻害された。このChla合成の抑制は,制御信号とはかゝわりなく,たん白合成阻害剤(Translation inhibitor)により解除され,回転の早いたん白が抑制機構に関与していることが判った。また,たん白合成阻害剤は,HQNO存在下で,Chla合成を一尸強く抑制する効果を示した。これらの結果より,(i)Chla合成がシトクロムb_6信号により調節されること,(ii)信号はChla合成の抑制を解除すること,(iii)この信号伝達・制御系には少くとも2種の回転の早いたん白が働いていることの推論をえた。 (2)PSIのアポたん白(psaA/Bペプチド)をタ-ゲットとして ^<35>Sーメチオニンによるパルスラベル法から同ペプチドの合成速度を測室する系を確立して,PSI合成速度の調節とChla合成調節とを比較検討した。その結果,ci)PSI合成速度は信号により2倍程度まで変化すること,(ii)その変化とChla合成の調節変化とは一致すること,(iii)アポたん白合成調節はtranscriptionを含まないらしいことを示す事実をえた。 以上の結果より、Chla合成調節を介するPSI形成調節のより分子レベルに接近した作業モデルを案出した。
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