カンジタ酵母の形態変異を解析するために、細胞融合を利用した遺伝解析とそれを応用する実験系を開発した。Candida albicans A5153株とNARA2株を栄養要求性の相補により、原要求性の融合株を得た。融合株に弱線量の紫外線を処理して栄養要求性が再び発現するようになる分離体を得た。こうして得た分離体では染色体バンドパターンが変り、集落形態の変異が栄養要求性とともに連鎖して現れる。こうして得られる分離体をさらに菌糸形成や倍数性の性質に注目して調べたところ、細胞融合に用いた親株のいずれかの有する形態的特徴を引継いだもの、全く両親とは異なった特徴をもつものに分けられることが判明した。得られた種々の分離体を比較することから、菌糸形成の過程を、凝集能の現れる素過程、温度、エタノ-ルに感受性の各素過程に分けられることが分かった。この結果は植物学会で講演発表し、現在論文を作成中である。また、この系で温度感受性に倍数性のかわる変異体が分離された。この変異体は高温(37℃)処理によって核DNA量があがる(核内倍化)こと、低温(30℃)に戻すと核DNAの減数的分裂が蛍光顕微鏡観察により認められ、集落形態の変異体および要求性変異体の分離頻度が上昇した。核内倍化とその後に続く核の減数的分裂を経ることと変異の生ずる程度との間の強い相関が示唆された。このことは、高頻度変異現象と倍数性の変換現象とが共に絡みあっていることを意味し、こうした発見は世界初のものであると自負している。
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