1.栄養要求性遺伝子の解析が進んでいて集落形態高頻度変異を行なわないA5153株(His^ー Trp^ー Lys^ー)と、集落形態高頻度変異を示すNARA2株(Met^ー Pro^ー)とを細胞融合でかけあわせた融合株を得て、さらにその融合株を弱線量紫外線処理することで、どちらの親株にもない集落形態をもった変異体を多数単離することに成功した(平成元年度)。このなかに温度感受性に集落形態変異の頻度を上昇させるがあった。顕微分光法による核DNA定量、抗チュブリン蛍光抗体による核の紡錘体観察の結果から高温(37℃)では核相を増加させていることが判明した。またこの変異体ではこの高温処理により栄養要求性変異を生ずる頻度も増加することから、高頻度変異と核相の変化との間に相関のあることも判明した。 2.__C.<albican>___ーに近縁な石油資化酵母__C.<tropicalis>___ーにおいても本研究者は集落形態が高頻度に変異する現象を確認し、集落形態変異株を分離するのに成功した。そのなかでも正菌糸および偽菌糸の両方で増殖する変異株、および偽菌糸形成が盛んになる変異株では、染色体電気泳動の結果からバンドのVIIとVIIIにおいて移動度の変化または喪失がみられ染色体再配列を起こしていることが判明した。一方酵母型で増殖する親株では、石油資化誘導条件下で偽菌糸形成の頻度が増加するにもかかわらず染色体電気泳動のバンドパタ-ンには全く変化がみられなかった。よって前二者の変異体は遺伝的変異であり、菌糸形成という細胞変異において関連する遺伝子がバンドVIIおよびVIIIに存在することを示唆している。 3.平成3年度以降では、カンジダ酵母の遺伝子ライブラリ-を作成し、菌糸形成や高頻度変異に関わる遺伝子の分離と同定、染色体上での位置関係を明らかにする予定である。
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