有性世代をその生活史に欠き、半数体の核相時期をもたない酵母C.albicansでは、集落形態が10^<ー2>から10^<ー3>という高頻度で変異する現象が認められる。集落形態変異を起こした集落を構成する細胞にはそれぞれの集落形態に応じた特徴的な細胞形態が観察されるほか、大型で多倍数化している細胞が観察された。また集落形態変異を起こした集落の培養についてその染色体構成をパルスフィ-ルド電気泳動により調べてみると、染色体バンドパタ-ンに変化がみられた。そこで多倍数化と高頻度変異能、染色体再配列の関係が示唆された。この関係性をさらに確認するために、温度感受性に多倍数化した細胞を出現させる変異株(#31ー30)やそれを細胞融合によって人為交配させた株を用いて、高温(37 ^°C)処理で多倍数化を誘起したところ、(1)異型接合に存在する栄養要求性変異が現れる頻度が増加すること、(2)集落形態変異が高頻度に現れること、(3)変異した集落についての染色体バンドパタ-ンには変化を起こしたものもみられることが判明した。多倍数化細胞の出現頻度と栄養要求性変異体の出現頻度との間には平行関係がみられることから、多倍数化した細胞が高頻度変異現象に関与している可能性が示唆された。 一方、人為的交配を行う細胞融合の過程では、核融合過程で倍数性が増加する。この系においても染色体再配列の起こることが親株と融合株との間で染色体バンドパタ-ンを比較することから判明した。いずれの系でも、クロ-ン化したrDNA遺伝子をプロ-ブとして用い、分離した染色体DNAバンドとのハイブリダイゼ-ション実験の結果、rDNA領域が染色体再配列を起こした染色体に存在する場合と、さらにrDNA以外の因子が再配列に関与している場合もあることが分かった。とくに後者については、rDNA以外の反復配列をクロ-ニングし、それがどう染色体再配列に関わるかを明らかにすることが今後の課題である。
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