研究概要 |
本年度は研究上の大きな進展があり、次の2つの主要な成果をあげることができた。 1.アディポキネティックホルモン(AKH)の作用機構について。AKHをバッタの脂肪体とインキュベ-トし、脂肪体中のDGのレベルが上昇するかどうかをしらべ、さらにこの脂肪体を再びバッタの血液とをインキュベ-トし、リポホリンによる脂肪体からのDGの取り込みにAKHが関与しているかどうかをしらべた。その結果,AKHは直接脂肪体に働き、脂肪体のDGのレベルを顕著に増大させること、このAKHの作用にはCaイオンが必須であり、したがってAKHの直接作用は、脂肪体の細胞膜におけるCaイオンの流入を促進させることにあり、その結果、lipaseが活性され、TGからのDGの生成が促進させると結論した。また、リポホリンによる脂肪体からのDGの積み込みには、AKHは全く関与していないことも明かにした。 2.バッタにAKHを注射すると、High Density lipophorin(HDLp)がLow density lipophorin(LDLp)に変わることが明かになっているが、このLDLpの性質については、尚いつくかの不明の点が多い。本年度は、この中で最も基本的な問題である、LDLpに結合するアポ-IIIの量を正確に決定した。その結果、LDLp1分子に対して最高13分子、最低7分子のアポ-IIIが結合し、最も多くの場合、9分子のアポ-IIIが結合することを明かにした。また、LDLpは分子サイズがきわめて不均一になることも以前に報告したが、この不均一性は事実であり、この不均一性は、LDLp分子の分子間融合によって引き起されるという、我々の説を支持する多くの証拠を得ることもできた。
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