研究概要 |
二年間の研究によって、次の研究成果をあげた。 1.アデイポキネテイツクホルモン(AKH)の作用部位は脂肪体の細胞膜のカルシウムチャンネルを開くことにあり,その結果,細胞外のカルシウムが細胞内に流入し,Ca・依存性のプロテインキナ-ゼを介して,リパ-ゼガ活性化され,その結果,TG→DGの加水分解反応が促進され,最終的にリポホリンによるDGの積み込みが促進される。 2.昆虫の血糖であるトレハロ-ズはリポホリンによる脂肪体からのDGの積み込みを阻害する。したがって,正常状態では,DGの積み込みは起らず,長距離飛行のための燃料がセイブされることになる。飛行開始と同時に,トレハロ-ズレベルが急減し,DGの積み込みがはじまる。同時にAKHの分泌も開始され,DGの積み込みは一層促進される。 3.AKHの作用によって,リポホリン(HOLp)は多量のDGを積み込み,より密度の低いLDLpとなるが,LDLpに積み込まれたDGの量は分るにより一定ではなく,最高1.5倍の範圍で変動する。また,これに伴って,結合するアポ-IIIの量も変動し,最低リポホリン1分子当り7分子から,最高14分子結合する。平均では約9分子結合する。また,LDLpの分子サイズの不均一性は分子間融合によることをさらに確認することができた。 4.長距離飛行可能の昆虫として,トノサマバッタを,長距離飛行不能の昆虫として,ゴキブリをとりあげ,両者を分子レベルで比較した。その結果,ゴキブリではアポ-IIIを欠除しているばかりでなく,脂肪体のDGのレベルが極端に低いことが明かとなった。また,孤独相のバッタの脂肪体はきわめて貧弱であり,燃料であるTGの含相量は,個体当り静生相のそれの1/(100)以下であることが明らかとなった。
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