オ-プンル-プ型トレッドミル球によるクロコオロギの定位接近行動の解析と、その結果を基礎とした神経回路材能の解析を行った。 1)行動解析 a)雄の誘引歌による雌の定位接近行動を観察者の干渉なしに自動的に記録するトレッドミル装置を作成・改良した。定位方向、積算歩行距離・実接近距離(ベクトル量)を同時記録、算出するとともに、デ-タの蓄積が確実に行えるよう、ハ-ド・ソフトともに完成させた。 b)定位行動の概日リズムを測定した結果、予想に反し日中が最も高く、日中実験が望ましいと判定できた。 c)羽日直後の雌には、定位行動は認められず、2ー3日後より徐々に発想し始め、その後終生継続してみられ、その度合は安定していた。 d)雌は、雄コオロギの誘引歌のみならず、闘争歌にも誘引されることが明らかとなった。 e)交尾経験を有する雄に限って、一定の隔離時間経過後(6ー12時間)、同性の雄誘引歌に対し、定位行動を示すようになった。 2)電気生理学的解析 a)後脚の歩行時の動きを支配している筋肉を制御する運動ニュ-ロンを、後胸神経筋肉で同定、細胞体のマッピングに成功した。 b)後脚運動ニュ-ロンの活動性を強力に制御できる前運動性のノンスパイキング介在ニュ-ロンを多数同定した。 c)トレッドミル球上の歩行中のコオロギから、これらニュ-ロンの活動性を細胞内記録できるよう、実験装置の改良を進め、その予備的実験から、ノンスパイキング介在ニュ-ロンの定位接近行動における重要性が示唆された。
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